大阪公立大学、30年度までに起業50社 「稼ぐ大学に」
#関西 #地域 #2025年 万博
2024/5/28 5:00
公立大学法人大阪の福島伸一理事長は「自ら稼ぐ大学」を目指す考えを示した
大阪公立大学は2030年度までに大学発スタートアップを50社創出する方針だ。起業に向けたコンサルティング窓口を設けるなど支援体制を整え、特許のライセンス料や寄付金など大学が得られる資金の増加を目指す。限りがある補助金や交付金に頼らず、外部資金を稼ぐ力を高めて研究や教育環境の充実につなげる狙いだ。
同大学を運営する公立大学法人大阪の福島伸一理事長が、日本経済新聞の取材に答えた。経済産業省が15日発表した23年度調査で、大学発スタートアップ数の首位は東京大(420社)。慶応大(291社)と京都大(273社)が続き、大阪公立大は37社にとどまる。
福島氏は「体力のある企業が減少する中、大学がスタートアップや新たなビジネスの担い手にならなければならない」と指摘。「大阪国際感染症研究センター」や、人工知能(AI)に関する世界最大規模の研究所「ドイツ人工知能研究センター(DFKI)」の研究拠点などの学内設備を生かし、「特に医療や工学の分野に注力する」と語った。
4月にはスタートアップ創出や産業界などとの連携を加速させるため組織を再編。産学官民共創推進本部やスタートアップ創出・支援センターなどを新設した。大学が持つ研究成果を企業やベンチャーキャピタル(VC)などに売り込み、起業に求められるマネジメントや研究の実用化などで教員をサポートする。
同大学は財政基盤を強化するため、外部資金を30年度までに22年度比で倍増させ、200億円程度に伸ばす目標を掲げる。23年度は国の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(約55億円)などに採択され、外部資金は計100億円を超えたとみられる。ただ、大口事業が少なかった22年度は計約94億円。文部科学省によると科学研究費補助金(科研費)は約21億円で、東京大(約211億円)や京都大(約141億円)などに水をあけられている。
福島氏は「国の補助金には限りがある」と指摘。産官民との共同研究やスタートアップの創出で、大学への投資や寄付を増やし、「研究や教育に必要な資金を自ら稼ぐ」と強調した。産業界や行政との連携を促すため、教員の社会貢献度に応じた評価システムの導入も検討中だと説明した。
英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)がまとめる世界大学ランキングで、24年に「1201〜1500位」だった順位を35年までに200位以内に引き上げる目標も掲げている。海外からの研究者や留学生を呼び込むため、国際事務サポートセンターや国際教育センターを4月に新設。23年度は計784人だった外国籍教員と外国人留学生を30年度までに倍増させる計画だ。
25年国際博覧会(大阪・関西万博)については「学生たち若い世代が未来社会を体感する機会だ」と指摘。22年から町づくりやリーダー論などを学べる「ボランティアリーダー育成プログラム」を開講し、受講生は累計で100人にのぼるという。
16日に公表した、青酸カリ(シアン化カリウム)など計50グラムを紛失した件については「深くおわび申し上げると共に、警察の捜査に全面的に協力する」と陳謝した。27日に化学物質の管理ルールを改正し、安全対策の強化に取り組むなどの再発防止策を発表した。